犬の外耳炎の症状と原因、治療について|獣医師が解説|志木市のアポロ動物病院

志木市・新座市・朝霞市・ふじみ野市・清瀬市の皆様こんにちは。埼玉県志木市のアポロ動物病院です。

今回は、犬の外耳炎について、病気の原因や対処法、治療方法について解説していきます。

当院では、犬の外耳炎の治療を行っておりますので、お悩みの場合は一度ご相談ください。

 


犬の外耳炎とは?どんな病気?


外耳炎は犬で最もよく見られる耳の病気の1つです。外耳は耳の穴(外耳孔)から鼓膜の手前までの通り道(垂直耳道と水平耳道)の部分を指し、なんらかの原因により外耳に炎症が生じてしまった状態を「外耳炎」といいます。軽度の外耳炎であれば適切な治療を行うことで良くなることがほとんどですが、重症化してしまうことや慢性化してしまうこともあるため注意が必要です。

 


犬の外耳炎の症状について、こんな症状はありませんか?


犬が外耳炎を発症すると、外耳の炎症により次のような症状を示すようになります。

・耳を痒がる
・首をよく振る

・耳が赤い

・耳が臭い

・耳を触ると嫌がる

・耳の汚れが多い

・耳の穴が狭くなる

・耳に色素沈着が見られる

上記のような症状が見られる場合には外耳炎の発症が疑われます。早めに動物病院を受診するようにしましょう。

また、外耳炎が重症化すると、鼓膜のさらに奥の中耳炎や頭蓋骨内の神経が集まった部分である内耳炎が引き起こされてしまうことがあります。その場合は、上記のような症状に加え、次のような症状が見られることがあります。

・首をずっと傾けている 

・目が回る

・顔の神経の麻痺

・片目だけつぶったようになってしまう(瞬膜突出または瞬目)

これらの症状が見られる場合は特に注意が必要です。

 


犬の外耳炎の原因について


犬の外耳炎の原因は4つに分けて考える(PSPP分類)のがわかりやすいとされて近年推奨されるようになってきました。

1)Primary(主因)それだけで外耳炎の原因になってまうもの

外耳炎は単独で起こることはほとんどなく、なにかの原因が必ずあってそれに伴って発症すると言われています。たとえば、甲状腺機能低下症や脂漏症(脂漏性皮膚炎)、耳の中の異物迷入(草のノギ、昆虫など)、ミミダニ(ミミヒゼンダニ)の感染増殖、外傷などがあげられますが、なかでももっとも多く見られるのはアレルギー性皮膚炎です。特に犬では「犬アトピー性皮膚炎の80%強に外耳炎の症状がみられた」、「犬アトピー性皮膚炎の35%において症状が外耳炎のみだった」や、「犬食餌アレルギー性皮膚炎(FAD)の80%に外耳炎の併発がみられた」などアレルギーと外耳炎の関連を証明づけるデータが多く出ています。

2)Secondary(副因)外耳炎の結果として出てくる問題

単独では外耳炎の起因にならないものの、いったん外耳炎を起こすと多くの場合出現してさらに外耳炎の症状を悪化させる要因になるものです。細菌感染やマラセチアという酵母様真菌(カビの一種)の増殖がこれに当たります。外耳炎のときに感染を起こす菌で最も多いのはブドウ球菌です。これらの感染の治療だけで外耳炎が治ることはありませんが、主因に気をつけながら適切なコントロールをすることにより、より早く症状を改善させていくことが可能です。

3)Perpetuating(増悪因)外耳炎の症状を悪化させる問題

外耳炎によって耳に起こる構造的な変化です。その結果より外耳炎が治りにくくなってしまったり、重症化してしまうことになってしまいます。

憎悪因としては、

・耳道の浮腫(むくみ)と狭窄(せまくなってしまう)

・耳垢の増加

・分泌腺(耳道壁に無数にある耳垢を分泌する細かい穴)の炎症・閉塞・拡張・過形成

・鼓膜の変性、破綻(破れて穴が空く)

・耳道壁の石灰化

・中耳炎への波及

これらの憎悪因を解消していくために大切な治療は適切な液剤を選択した上での耳道洗浄です。炎症が強く痛みがひどい場合等には全身麻酔下での耳道洗浄をお勧めすることもあります。

4)Predisposing=(素因)生まれつきの外耳炎のなりやすさ

外耳炎になる前からすでにあることで外耳炎のなりやすさや治りにくさに関わるものです。周囲の環境(高温多湿、季節など)、耳毛が多い、耳道が生まれつき狭い、耳道がもともと細い犬種(フレンチブル、パグなど短頭種)、垂れ耳、耳道の腫瘍やポリープ、不適切な洗浄による耳道損傷、他の疾患による免疫低下や免疫異常状態などがあげられます。外耳炎がなかなか治らなかったり、繰り返したりする場合には素因の存在がないか確認することも重要です。耳道の構造的問題(狭い、細いなど)が存在する場合は、手術をして改善しないと繰り返しが止まらないこともあります。

 


外耳炎のPSPPに関連することが多い病気


アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は環境中の抗原に対して過剰な免疫反応が生じてしまうことで皮膚の痒みや脱毛などを引き起こす病気です。アトピー性皮膚炎を発症している犬では皮膚のバリア機能が弱かったり、痒みにより耳を引っ掻いてしまったりすることで外耳炎を引き起こしやすくなります。

食物アレルギー

食物アレルギーは特定の食物抗原に対して過剰な免疫反応が起きてしまう病気です。食物アレルギーでは皮膚症状を示すことが多く、外耳炎も発症しやすくなります。

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)

ミミヒゼンダニ(耳ダニ)の感染があると痒みが非常に強く、黒いぽろぽろの耳垢が出ることが多くあります。検耳鏡で耳道の中を覗くとダニが動いているのが分かることも多いです。

異物

植物の種やゴミなどの異物が外耳に入り込んでしまうと炎症が引き起こされ、外耳炎の原因になることがあります。

腫瘍

外耳に腫瘍が形成されていると、慢性的な外耳炎の原因になります。

 


犬の外耳炎の治療について


外耳炎を治療していくにあたっては上の4つの要因を見極めていくことが非常に大切です。

そのためには検耳鏡による耳道の観察と耳垢検査を行います。また場合によってはアレルギーについて診断を進めたり、全身の状態を把握していくために血液検査、超音波検査など耳以外の部分の検査が必要なこともあります。

その後、診断に基づいて以下のような治療を実施します。

耳洗浄

専用の洗浄液を外耳に入れ、汚れを浮かせて取り除きます。蓄積した耳垢や細菌、真菌などを物理的に取り除くことができるため、あらゆる外耳炎に有効な治療法ですが、外耳炎を起こしている耳は痒みや痛みを引き起こしていることが多いため、注意して洗浄することが重要です。洗浄は動物病院で行うことがおすすめで、週1〜2回の洗浄が適切です。

点耳薬

外耳炎では抗菌成分や抗真菌成分、抗炎症成分などが配合された点耳薬が処方されることが多いです。投与することで過剰に増殖した細菌や真菌を殺し、外耳の炎症を鎮めます。複数の種類の点耳薬があり、毎日投与するものや週1回投与するもの、月1回投与するものなどがあるため、費用や手間などを考えて獣医師に相談してみるといいでしょう。

内服薬

とくに痛みや痒みが強く、耳に触ることに抵抗が強い場合、消炎剤や抗菌薬、抗真菌薬などの内服薬を処方されることがあります。点耳薬と組み合わせる場合や、内服薬だけで治療を行う場合などがあります。

駆虫薬

ミミヒゼンダニが原因の場合、駆虫薬の投与が必要になります。駆虫薬には複数の種類があるため、獣医師に相談してみるといいでしょう。

異物の除去

外耳内の異物が外耳炎の原因となっている場合、その異物を取り除く必要があります。場合によっては全身麻酔をかけての処置が必要になることもあります。

腫瘍の切除

腫瘍により外耳炎が引き起こされている場合は腫瘍の切除が検討されます。良性腫瘍であれば切除することで経過は良好であることが多いですが、悪性腫瘍の場合は転移や再発のリスクがあります。

 

外耳炎の治療は漫然と行うのではなく、PSPP分類に基づいて各要因に対してしっかりとした対策を立ててから始めることが重要です。また主因や素因の有無によっては完全に治って二度と再発しないというのが難しい場合もありますので、きちんと見極めてどうやって家庭での日常のケアに繋げていくのかということが大切ですので、その点について飼い主さんと充分に相談することが重要だと考えられます。