【獣医師が解説】猫の腎臓病の症状や治療方法について|志木市のアポロどうぶつ病院
志木市・新座市・朝霞市・ふじみ野市・清瀬市の皆様こんにちは、
埼玉県志木市のアポロどうぶつ病院です。
猫は高齢になると「慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)」にかかりやすい動物です。
この病気は、腎臓の機能が徐々に失われていく進行性の病気で、完全に治すことはできません。
ただ、早期発見と適切なケアにより病気の進行を遅らせ、生活の質(QOL)を保つことができます。
◆慢性腎臓病ってどんな病気?
腎臓は、体の中の老廃物や有害な物質を尿として排出したり、水分・ミネラルのバランスを保ったりする大切な臓器です。
慢性腎臓病では、この腎臓の機能が少しずつ低下し、老廃物が体に溜まってしまうため、さまざまな症状が出てきます。
◆どんな猫がなりやすいの?
特に10歳以上の高齢猫で多く見られ、猫の死亡原因の上位に挙げられることもあります。
品種にかかわらずどの猫でも発症する可能性があり、年齢とともにリスクが高くなる傾向があります。
◆飼い主さんが気づける症状とは
慢性腎臓病は進行がゆっくりで、初期は症状がほとんど見られません。ですが、次のようなサインが出始めたら注意が必要です。
- 水をたくさん飲むようになった
- 尿の量が増えた
- 食欲が落ちた 好き嫌いが増えた
- 体重が減ってきた
- 嘔吐することが増えた
- 口臭がきつくなった
- 被毛がボサボサになってきた
これらは腎臓のろ過機能が低下し、老廃物が体に溜まって発現する尿毒症の症状かもしれません。
◆早期発見が大切な理由
腎臓の細胞は再生能がなく、一度壊れてしまうと元に戻りません。
そのため、病気が進行する前に見つけて、できるだけ早くケアを始めることがとても重要です。
早期発見のためには、年1〜2回の血液検査・尿検査が効果的です。
特に高齢の猫ちゃんは、症状が出ていなくても定期検診をおすすめします。
猫の慢性腎臓病(CKD)は、病気の進行度を4つの段階(ステージ)に分けて評価する「IRIS分類」という基準があります。
これは治療方針を決めるためのとても重要な目安です。
◆IRISステージって何?
IRIS(アイリス)分類は、血液検査で測定する「クレアチニン値」や「SDMA値」「尿たんぱく」「血圧」などのデータをもとに、腎臓病の重症度を4段階に分けます。
✅ ステージ1(初期)(クレアチニン<1.6、SDMA<18)
-
腎臓の働きにごく軽い異常
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血液検査ではほぼ正常に見えることも多い
-
症状はほとんどなし
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早期発見と定期検診が重要
✅ ステージ2(軽度)(クレアチニン1.6〜2.8、SDMA18〜25)
-
腎機能がやや低下
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水をよく飲む、尿が増えるなどの変化が出始める
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専用の療法食などで進行を遅らせることができる
✅ ステージ3(中等度)(クレアチニン2.8〜5.0、SDMA25〜38)
-
腎機能が明らかに低下
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食欲不振、体重減少、嘔吐、口臭などの症状が出やすくなる
-
点滴や薬を併用することが多くなる
✅ ステージ4(重度)(クレアチニン>5.0、SDMA>38)
-
腎臓の働きがかなり悪くなっている状態
-
症状が強く、日常生活に支障が出る
-
治療とケアで「つらくない時間」をできるだけ長くすることが目標
◆治療と日常のケア
慢性腎臓病の治療は、主に「症状を緩和する」・「進行を遅らせる」ことが目的です。以下のような対応を行います。
また腎臓病が進行すると、貧血や高血圧、低カリウム血症、胃腸障害などの二次的な合併症も現れます。
こうした合併症の管理も慢性腎臓病の重要な治療の一部です。
- 療法食(たんぱく質・リンを制限し、ナトリウムやオメガ3脂肪酸を調整して腎臓への負担を減らした特別なフード)
- リン吸着剤や胃薬などの投薬(合併症のコントロール)
- 皮下点滴や静脈点滴(脱水を防ぐ)
- 造血ホルモン剤の注射(腎性貧血を解消する)
- 十分な水分摂取の工夫(自動給水器やスープタイプのご飯の併用)
また、ストレスを減らし、穏やかな生活環境を整えることも大切です。
日々の観察で、「水の飲み方」「トイレの様子」「食欲」「体重」などに気を配ってあげてください。
◆まとめ:猫の健康寿命を延ばすために
慢性腎臓病は多くの猫が高齢期に抱える病気です。でも、早く気づき、適切なケアをすることで、愛猫が元気に過ごせる時間を延ばすことができます。
少しでも気になる症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。
私たちアポロどうぶつ病院では、飼い主さまと一緒に猫ちゃんの健康を支えるためのサポートを全力で行っています。